2019年09月23日

子どもの考えをつないで深める 109回川崎学びの会の報告

 今回は高校3年現代社会の授業から学びました。
 授業者はI先生。今年の5月に神奈川県立S高校で行われた授業です。
 テーマは「日本国憲法でもっとも大切なもの」。憲法の授業の第1時間目です。学ぶ姿をじっくり見ていると、改めてどの教科の授業からでも学ぶことがたくさんあるということを実感しました。


1.授業は次の3つの資料を音読するところから始まりました。
 川崎市で使われている教育出版発行の中学社会科「公民」の教科書にある「憲法とは何か」

 朝日新聞 2018年6月4日付けの江藤祥平(上智大学准教授)の文「私たちの文化が権力を縛る」

 伊藤真「ゆっくりいそげ」岩波文庫編集部編「岩波文庫古典のすすめ第2集」所収

 いずれも短い文章です。生徒はスムーズに読み進めていきました。

2、続いて、それぞれの文章の要点を抜き書きしました。生徒たちは課題にしっかり取り組んでいます。小学校以来、教室ではやっているのが穴埋め式のワークシートです。必要事項を記入するだけで大事なことがまとまるようにし、授業の効率を上げたいという善意からなのです。しかしそれでは資料や教師の話しの要点を把握する経験ができません。どこが大事なのかを把握し、穴埋めだけで完成するように考えてているのは教師だからです。
 「資料を読んで要点を書き出す」というのは生徒が要点を把握する経験をするという大事な仕掛けだと思います。ところが残念なことに授業者がグループの間を回り、声をかけています。グループで考えているところに声をかけるとグループ活動が停滞したり、声をかけられた子がグループからそれることになってしまいます。よく見る光景です。グループ活動中教師は何をすべきか、何をしてはならないのか。考えさせられた場面です。
 途中で憲法の条文が掲載されている教科書のページを示して先生が話しかけました。そのときに取り組んでいる課題には直接関係がない話しです。無駄な声かけをしていると、意図とは別に「聞き流す習慣」をつけてしまいかねません。黙って生徒の様子を見つめるということは、教師には難しいことなのだと改めて考えさせられました。
 抜き書きした文はそれぞれに違っています。授業者は順に指名してそれぞれに抜き書きした文を発表させます。時々、聞いている生徒を指名して「復唱」を求めました。次々に指名し、それぞれにここと思った「要点」を羅列することになりました。そのために、それぞれの考えがつながらず、なかなか深まっていきません。それぞれにどこを重要と考えたのか。その違いに注目するところから深めていくことができるはずなのですが、それができないのです。この場面になると生徒は指名された子の発言をぼんやりと聞くともなく聞いているという状態になっています。違う考えに出合って自分の考えを深めるということにはならないのです。
 生徒の発言から資料1について授業者は次のことを板書しました。
A:「政治権力が必要」
B:「立憲主義」
「AとBとはどういう関係になっているのか」と質問し、グループ活動に入りました。グループ活動に入るタイミングはよかったと思います。
ここでも生徒はよく考えました。ところがまたまた授業者がグループの間を回って声をかけていきます。AとBの関係は資料1に書かれています。ていねいに読めばすぐにわかることです。資料をもとに考えることを大事にしたいなあと思った場面でもあります。
 グループ活動後考えを交流しました。ここでも羅列が続きます。明らかな誤読による発言、矛盾する発言がある一方で、資料をほぼ的確に読み取った上での発言もあります。ところがそれがいっこうにつき合わされないまま羅列されいくのです。違う意見に正対することがないので、指名されない子(生徒の実感でいうと指名を逃れられた子)は聞き流しています。指名の都度もれる「笑い」には指名されなかった「安堵」の気持ちがあるのかもしれません。
 でもここに深く考える機会がありました。

資料にもどす
食いちがう意見に対する考えを求める
「□□さん。さっき言ったこともう一度言って」と前の発言にもどす

などのことをていねいにすることで深く考えることにつながる「対話」が生まれるようになるのではないでしょうか。本時では、グループ活動では的確な考えにたどり着いている生徒がいました。それにも関わらず、全体として「漂流」するような授業になったのではないかと思いました。それは、一人ひとりが深く考える契機となる対話を十分に組織できなかったことに起因しているのではないかと私は思います。

 ともかくグループではよく取り組み、全体で対話しながらそれぞれに追究する場面になると「漂流」してしまうというところは考えたいものです。
 でも圧倒的な教室の授業は「漂流」さえしていません。
 「沈没」しているのです。

文責 馬場英顕                       

追伸

先日お知らせした第110川崎学びの会の日程に誤りがありましたので以下のように訂正します。

(誤)10月23日(火)
      ⇊
(正)10月23日(水)
時間、会場には誤りはありません。
なお、今回の終了間際に川崎学びの会の運営について参加者のお考えを聞かせていただきました。
その結果、12月の月例会は土曜日に開催してみようということになりました。
posted by 川崎学びの会 at 14:43| Comment(0) | 月例会 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2019年09月05日

9月の川崎学びの会は高校の社会科で (9月の川崎学びの会のお知らせ)

 皆さま夏休み明けで何かとお忙しく、お疲れのことと思います。
 業務に追われてぐったりする毎日からぬけるためにも、気分転換も兼ねて月に1回ほど授業をもとにみんなで学び合ってみませんか?

 9月の川崎学びの会(109回)を次のように開きます。

1. 日 時 2019年9月10日(火)

 18:30〜20:30

2. 会 場 川崎市高津市民館 第一会議室

   交通 JR南部線「武蔵溝の口」駅 下車

      東急田園都市線「溝の口」駅 下車

 徒歩数分 丸井の入っているビルの11階

3. 内 容 高校3年現代社会

 「日本国憲法で最も大切なこと」

 授業事例を募集しています。ぜひ月例会に提案して一緒に考えてみませんか?子どもたちを発見し、自分の授業に隠れた可能性にきづくかもしれません。
 自分の授業をていねいに振り返ることはきっと目を拓かれるような気付きの機会になるでしょう。
 ビデオは同僚に撮ってもらうのが一番です。連絡いただければ日程をご相談して収録にうかがうこともできます。無理なら固定カメラによる自撮りという手もあります。

 なお、この先の予定は次の通りです。

10月の月例会:10月23日(火)18:30〜

 中1理科

11月の月例会:11月19日(火)18:30〜

 国語:文学の読みを学ぶ

 事例 「かさこじぞう」を中心に「お手紙」と「一つの花」の読みが深まった場面


 会場はいずれも 川崎市立高津市民館です

 文責 SV 馬場 英顕
posted by 川崎学びの会 at 06:41| Comment(0) | 月例会 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする